お口の中の話
2018/07/11

だ液の働き

動物がけがをしたとき、傷口を舌でなめていますね。また私たちも、指先をケガしたとき、思わず口に含んでいることがありませんか。傷口をなめると、傷に付いた汚れがきれいになるとともに、だ液の中にある抗菌物質の作用で、感染を防止し、傷の治りが早くなります。このことを動物は本能的に知っているのでしょう。

さて、私たちのだ液は、耳下腺・舌下腺・顎下腺の大唾液腺と、口腔粘膜にある小唾液腺で作られ、一日に約一・五リットル分泌されるといわれています。この量は一日に出る尿の量に匹敵します。
この唾液は、食べ物の消化と嚥下(食べ物を飲み込むこと)がうまくできるように働いています。そのほか、口の中を湿らせることによって、舌の運動を滑らかにして発音を助けたり、口腔(口の中を意味する)に生息する微生物の生育を抑制して、感染症にかからないように防御しています。また、むし歯にならないよう口の中を洗浄したり、歯を保護する膜を作る働きもあります。
だからだ液の出なくなる病気(自己免疫疾患であるシューグレン症候群など)にかかると、あっという間に全部の歯がむし歯や歯周病になってしまうこともあります。

よく噛むと癌を防げる

ところで、近年、唾液の作用で注目される研究が発表されました。食品添加物などに多い発癌性のある物質も、だ液に30秒間つけると、その発癌性が数十分の一になるというものです。よく噛みよく咀嚼して、食べ物とだ液がよく混ざりあうことが、癌予防にも役立つことがわかったのです。

下顎をしっかり動かして咀嚼すると、反射的に(無意識に)だ液の分泌が増加します。また、よく噛んでゆっくりと食べ物を味わうと、味覚の働きで、反射的にだ液がたくさん分泌されてきます。楽しくおしゃべりをしながら食事をすることも、だ液の分泌を多くするといわれています。
よく噛みゆっくりと食事をすることは、このような唾液の働きを十分にするためにも大切なことです。

引用元:
歯にいいはなし 香川県歯科医師会編 医歯薬出版刊