お口の中の話
2018/07/10

ダイナミックバランス

大陸移動と歯の移動

「不動の大地」という表現がありますね。しかし、地球上の大地が少しずつ動いていることは、もはや小学生でも知っている常識となりました。
一方、私たちの歯も少しずつ動いていることをみなさんはご存じですか。このことはまだ日本の常識にはなっていないようですね。歯は、生えた当初の位置でじっとしているのではありません。歯の位置が固定されているようにみえるのは、いろいろな力が歯に働きかけて、それらのバランスがとれた位置にあるからです。このような状態を「ダイナミックバランスがとれている」といいます。

バランスの崩れた状態を考えてみましょう

たとえばよくあるのは、指しゃぶりで中から外へ押す力が強く働く場合です。この場合は上顎が出っ歯になってしまいます。また慢性の鼻の病気で常に鼻が詰まり、いつも口で呼吸している子どもは、唇が中へ押す力が弱くなるので、上下の歯が出っ歯になってしまいます。そのほか、常に頬杖をついている子どもは、押されている側の歯が少し中へ入ってしまうということもあります。
また、いつも歯をくいしばって唇を緊張させ口元を引き締めている人(おとがいに梅干しのようなしわを作っている人)は、しだいに前歯が内側へ傾いていきます。

このように、歯の位置というものは、その人の口の周りの習慣を反映しているといえるでしょう。
さらに歯槽膿漏などで歯を支える骨が弱くなると、ちょっとしたダイナミックバランスの乱れで歯が移動してしまうのです。だから歯が一本でもなくなると、ダイナミックバランスが崩れて、いろいろな弊害が出てきます。

ダイナミックバランスの崩れる原因例

引用元:
歯にいいはなし 香川県歯科医師会 編 医歯薬出版発行